大学AI研究者との共同研究を開始 ── どの情報が、人の意思決定を変えるのか
MarsLink(マーズリンク)は2026年7月、大学のAI研究者との共同研究を開始しました。テーマは、AIを活用した意思決定支援とサービス体験です。
私たちが検証したいのは、シンプルですが移動AIの核心にある問いです。
「どのような情報を、どのような形で人に渡すと、意思決定はどう変わるのか。」
きっかけは、台風接近時の京都だった
この研究テーマの議論が深まったきっかけは、代表・市位の実体験でした。
台風7号が接近していた日、報道では「京都・鴨川が氾濫するのではないか」という情報が繰り返し流れていました。映像と見出しだけを見れば、「京都に行く」という選択肢は消えます。実際、報道の情報だけを受け取った人の多くは、そう判断したはずです。
しかし同じ時間、大阪では雨がほとんど降っていませんでした。目の前の空と、画面の中の警戒感が食い違う。本当のリスクの大きさが、報道だけでは分からない——そう感じながら京都へ向かうと、街は落ち着いたままでした。
もちろん、これは結果論です。行かないという判断が間違いだったという話ではありません。重要なのは、同じ日・同じ目的地でも、受け取る情報によって意思決定が正反対になったという事実です。
本当のリスクは「氾濫」だけではなく「運休」だった
もうひとつの気づきは、リスクの構造です。
この日、行動の判断に本当に影響すべき情報は、鴨川の水位だけではありませんでした。むしろ大きかったのは、電車が運休して帰れなくなるかもしれないという、移動手段の側のリスクです。
- 安全のリスク:河川の氾濫、暴風など、その場所にいること自体の危険
- 行動のリスク:運休・欠航・通行止めによって、予定していた移動ができなくなる可能性
この2つは本来別のレイヤーにありますが、報道は前者を強調しやすく、後者は個人の状況——どこから行くのか、何時に帰るのか、代替手段はあるか——に依存するため、一律には伝えられません。人はこの2つを混ぜたまま、「なんとなく不安だからやめる」か「なんとなく大丈夫そうだから行く」かを選んでいます。
どの情報を渡すかで、意思決定は変わる
この経験は、私たちが移動AIで向き合っている問題の典型例でした。
情報が足りないのではありません。気象、河川水位、運行情報、現地の状況、報道——情報はむしろ過剰にあります。足りないのは、それらを横断して読み、その人の状況に合わせて、判断できる形に変える層です。
AIの活用によって、分断された情報を横断的に分析することは技術的に可能になりました。残された問いは、それを煽らず、隠さず、判断できる形でどう人に渡すかです。
共同研究で検証すること
今回の共同研究では、京都大学・京都外国語大学の研究者との連携のもと、次のようなテーマを検証していきます。
- 情報提示と意思決定の関係の分析 ── どのような情報を、どの順序・粒度で提示すると、人の判断はどう変わるのか
- リスクの分解と伝え方 ── 安全のリスクと行動のリスク(運休・帰宅困難など)を分けて、個人の文脈に合わせて伝える設計
- 横断的な状況認識 ── 気象・運行・現地情報・報道を統合した状況認識と、その較正(キャリブレーション)
- サービス体験としての評価 ── 移動・滞在の現場で、支援がどう受け取られ、行動がどう変わるかの検証
CabinTime・Journey AIへの反映
研究の成果は、MarsLinkのJourney AIにおけるリスク・制約評価と根拠つき提案のレイヤーに反映していきます。
私たちの原則は変わりません。AIは人の代わりに決めるものではなく、人が、安心して、自分で選べる状態をつくるものです。避けるべき選択を隠さず示しながら、最終判断は常に人に残します。
MarsLinkでは、意思決定支援・サービス体験に関する共同研究、および移動・滞在の現場での実証にご関心のある研究者・事業者・自治体の方を歓迎しています。お問い合わせはこちらからご連絡ください。
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